『授業参観』とは何か?





そう問われたら俺は間違いなくこう答えるだろう。






『親バカ共の子供自慢の場』だと。



































!!?何で今日授業参観の日だって前もって教えてくれなかったの!!!?」










「「・・・・・・え??」」








いつもの朝食時の風景。俺とはいつものように行儀よく席につき朝食を平らげていたのだが、父さんを起こしに行った
はずの母さまがそう叫びつつダイニングに飛び込んできて・・・。








「なんで・・・知って??」






「あれ??言ってなかったけ???あれ???ちゃんから言ってくれるんじゃなかったっけ???」








そんな母さまの様子に、は不思議そうに首を傾げて俺を見て、俺はというと、当然それは隠して起きたかった事だった
わけで、ジト目で俺を睨んでくる母さまにも、不思議そうに俺を見つめてくるにも、答えを返せない。










「やっぱり隠してたな???」






「ッ!!?父さん!!!?」





「うわぁ・・・珍しい・・・パパ、スーツ着てるし・・・。」









相変らず不機嫌な顔で佇む母さまの背後からすっときっちりとスーツを着こなした父さんが姿を現して・・・







その手には、何故か隠しておいたはずの授業参観の告知のプリントがしっかりと握られていた。









「何時言い出してくるかと待ってたんだが・・・親に隠し事とは、父さんは悲しいぞ・・・。」








そう言ってわざとらしく泣きまねする父さんを軽く睨みつければ、俺は深い溜息をついた。









「ねぇねぇ?パパがそんな格好してるってことは、パパが来てくれるの?授業参観??」






「・・・ハズレ。行きたいのは山々なんだが、今日は俺も綾乃も朝から仕事なんだ。」






「授業参観って2時間目でしょう??・・・間に合わなくはないかもしれないけれど・・・。」







微妙よね・・・







そう考え込む母さまに、はあからさまに「なんだぁ・・・」と肩を落として・・・










「・・・そっかぁ・・・お仕事じゃあ仕方ないかぁ・・・。」







「全く、早くが言っていれば仕事キャンセルできたんだがなぁ?」








「・・・予め知ってたんなら自分からキャンセルすればよかったじゃないか。」










ボソッとそう言った俺に父さんは大げさに肩を竦めて・・・「俺のスケジュールは全て綾乃が握ってるからなぁ?」と苦笑
した。つまりは父さんが知ってても母さまが知らないんじゃキャンセルの仕様がない、と父さんは言いたいらしい。










「本当よ・・・。?こういうことはちゃんと教えてくれないと・・・急に言われても困るんだからね?」







「・・・別に俺は来てほしくなかったし。」






ちゃん!?」









困惑の色を浮かべる母さまに、俺はなんだかむかむかして、いつも以上に素っ気無く言葉を放つと、衝動に突き動か
されるまま席を立ち、鞄をひったくるようにして取ると、足早に玄関を目指して・・・。の慌てたような声が聞こえ
るけれど、それに答える余裕は俺にはない。











「・・・ちゃんどうしちゃったのかな・・・?」






「・・・反抗期かしら???」










取り残された三人のうち、女性陣は不思議そうに首をかしげているが、和麻だけは、の心情を理解していた。








「反抗期というよりは、寧ろ身内の恥を曝したくないだけだろ??」






「・・・身内の恥?」






「あぁ・・・教科にもよるが・・・授業参観で頑張るのは子供じゃなくて以外と親のほうだったりするだろう??」








例えば算数で、答えがわかる人と教師が問いかけるだろ?そしたら後ろで親が自分の子に手を上げるよう催促した
りするだろう??しかも大声で。当然そんな親をクラスメイトも、その親だって見ているわけだから、その子供に
とっては悪夢としかいい様がないほどの恥な訳だ。












そう語った和麻に、はそういえば・・・と、納得するかのようにその光景を思い浮かべた。









「でも、今までだってそういうこと何回かあったけど、パパたちはそれに当てはまらないよ???」






「ま、あくまでそれは例えだ。で・・・。お前たち、クラスメイト達に俺らの事、どう話してる??」






「・・・パパたちの事??」









不意の和麻の問いかけに、は可愛らしく首を傾げて・・・。









「ん〜・・・つい最近ね?国語の宿題で、女子はお父さんについて、男子はお母さんについて作文を書くって言うのが
あってね?私は当然パパの事を書いて、ちゃんはママのことを書いたんだけど・・・。」








そう語りだしたの表情には僅かながらに陰りが見えた。









「本当の事を書けば書くほど、柚葉先生に再提出言いつけられちゃうし、散々だったんだけど・・・うん。やっぱり皆
の、普通とは違うんだって・・・私もちゃんも思って・・・。」








でもでも、それが皆との違いだし、自慢の私たちのパパとママなんだよ!!?











そう、笑うに、綾乃は複雑そうな表情で和麻を見た。和麻はそんな綾乃の視線に応える事無く、愛娘へと視線
を投げ続けた。











「・・・羨ましがられたりしたんだよ?若いパパとママ。でも・・・ちょっとね。」










そう言葉を濁し苦笑したに、和麻には何となく何があったのか見抜いていた。









恐らく、自分たちを馬鹿にするような発言が飛び交ったのだろうと。










「あ、だからかな?ちゃんがパパたちが来ること嫌がったの??その時ね、クラスのこの一人に言われたの。
『八神の家はきっと家族総出で来るんだろうな?無職だし??』って・・・。」






別に仕事してないわけじゃないけど、本当の事は書けなくって、それでとりあえず家でいるって書いたら、そう、
変な解釈されちゃって・・・。









と、そこまで言ったはぎょっと表情を強張らせた。










「・・・・・・へぇ・・・『無職』、ねぇ・・・。」







「・・・寧ろホントに一族総出で行ってやろうかしら、授業参観・・・・・・。」








「・・・あ・・・あのぅ・・・パパ・・・ママ・・・???」









どす黒いオーラを漂わせつつ怪しく笑う両親には内心恐怖して・・・










(てか、本当にやりかねないし!!『一族総出の授業参観』!!!!!)










「ま、純なくんはそれが原因で俺たちを遠ざけたわけか。」






「今度は親御さんたちの前で馬鹿にされたくなかったから??ったく、情けないわ、ったら!!!」









苦笑する和麻と憤る綾乃に、娘たるは目をぱちくりさせれば。綾乃はそんなと目線を合わせる様に腰を下
ろして「あんたたちは、堂々としてればいいのよ!?あんたたちは紛れもなくあたしたちの子供なんだから!!」
と言い切った。










「他人がどう言った所で、何も変わらないじゃない。寧ろ真っ向から言い返せばいいのよ。来て貰えない僻みを言
うな!ってね。羨ましいでしょうって言い返せばいいの。」






「ママ・・・。」







「それに、も寧ろ進んでそれ言ってくれればよかったのに・・・。見返すだけの準備はしたのに。」








さも悔しそうに言う綾乃に、は若干不安を覚えたものの、ふと和麻へと視線を向ければ、和麻はぽんっと、希
望の頭を一撫でして・・・









「授業参観、期待していろ。・・・大丈夫。お前たちは余裕の表情でふんぞり返っていればいい。」








そう、にやりと笑う和麻は、娘のから見ても思わず逃げ出したくなるような黒い笑みで・・・。







「ぱ・・・パパ・・・ママ・・・???お・・・お仕事、は????」







そう怯える愛娘を無視して、綾乃は和麻に「やっぱり洋服より和服で行くべきかな?」と問いかけ、和麻も和麻で、
「どうせなら黒の留袖で・・・」などと、物騒な答えをしていたりしたのだが、はそんな両親の会話が怖くなって、
涙目になりつつ家を飛び出したのだった。


























































八神さん家の家庭の事情   番外編


八神家的授業参観。


























































教室はいつも以上の賑やかさで、次の時間に待ち受けているイベントで盛り上がっていた。







「ねぇねぇ、ちゃん、くん!今日は誰が見に来てくれるの??」






教室の大掃除中、にこにこと悪気なく問いかけてきたのは、と仲が良いクラスメイトの川原夏美。







「えっと・・・多分誰も来ないんじゃないかな?」






「え〜?八神ん家の両親、仕事してねぇんだろ???」





「来ないなんてありえなくね???」





そう言って可笑しそうに嘲笑うのは、どのクラスでも一欠片はいるであろう、頭の悪い連中で。








「なぁ?何とか言えよ、八神??」






「ッ!!!?」







ぐいっと、無視していた俺に、背後から抱きつき首を絞めてくる、このグループのリーダー的存在の五十嵐翔。








「やめてよ、五十嵐くん!!ちゃん離して!!!!」






「相変らず弟にベタ甘だなぁ?は??」






「ッ!気安く名前で呼ぶな!!!」







ニヤリと、俺と五十嵐の間に割って入ろうとするを舐めるように見下す五十嵐の腹に肘を入れれば、五十嵐の
拘束を振り切りを背後に隠すようにして立てば、五十嵐はよろめきつつも俺を睨んでくる。









「八神・・・テメェ・・・」







の言う通り。今日は誰も来ねぇよ。」








そう言って再び掃除に取り掛かれば。それだけでは気がすまなかったのだろう、頭に来る言葉を投げかけてきて・・・








「・・・ッ!!・・・あぁ、そうか!?子供の授業参観より、就職探しのほうが忙しいよなぁ???」






「そうだよなぁ・・・収入ないと、キツいもんなぁ???ウチ、私立でも屈指の金持ち校だし???」






貧乏人の来るトコじゃねぇけど、見栄張りたいもんなぁ?親ってのは???







そう、下品に笑うやつらに、俺の怒りも限界が来て・・・。








「・・・おい、お前ら・・・」





「お・・・おい!!アレ見ろよ!!!」






「・・・・・・???」










俺の出鼻を挫くように、窓際にいたクラスメイト達が騒ぎ出す。








「・・・な・・・なに??」






「アレって、確かロールスロイスって言う車だろ!!?すっげぇ長いの!!!」






「それってリムジンじゃないの??」






「あ・・・降りてくる!!!」









そんな会話に、俺たちも吸い寄せられるように窓際へと行けば。不意に、知った気配を風が運んできて・・・その気配
に、何故かの表情が見る見るうちに青くなってきて・・・・・








「・・・ま・・・さか・・・。」







「うっわぁ・・・・・・お姫様みたい・・・・。」







きゃあぁぁぁぁっ!!!とクラスの女子が黄色い悲鳴をあげる中、やはり顔色の悪いは、何処か怯えたような
視線を窓の外へと投げていた。








??」






「く・・・『黒の留袖』はどうしたのよ・・・ママ・・・・・・。」







そう絶句するに、俺は再び視線を窓の向こうに投げた。








因みにクラスメイトが騒いでいた車は確かにロールスロイス(白の)で、あれは神凪家所有の車だ。そして後部座
席の扉を優雅に開けたのは、俺の身間違いじゃなければ父さんの弟、神凪煉さんで・・・そこからまず姿を現したのは、
今朝見たスーツ姿の父さんではなくて、何処かのパーティにでも御呼ばれしたのかと疑うかのように、きっちり正
装した父さんで、そんな父さんにエスコートされ次に出てきたのは、艶やかな真紅のマーメードラインのドレスを
優雅に着こなした母さまで・・・。







が何故、いきなり怯えだしたのかを理解した俺までも、あまりもの父さんたちの奇抜な行動に絶句した。







・・・・・・つーか、朝から仕事じゃなかったのかよ、父さん、母さま・・・・・・








「何処の家の人だろう??」





「この学校にあれほどセレブな家柄の子供っていたか???」








などと周りが騒ぐ中、行動を起こしたのはやっぱりで・・・










「ッ!!!
パパッ!!!!!ママッ!!!!!!!!!!?







「えぇぇぇぇぇぇっ!!!!!?」








顔面蒼白で、咎めるような口調で窓の向こうに叫びだすに、クラスメイト達はあからさまにずざあっと退い
と俺を遠巻きに見ていた。








「あ・・・あれが・・・八神たちの・・・・・・」






「りょ・・・両親????」






「どーいうことぉ!!!!!?何で煉さんまで来てんのよぅ!!!!!!!!!」






周りの見えていないは思うがまま窓の外の人物たちと大声で会話していて・・・。俺はクラスメイト達同様呆然
と、そんなを見ているしかできなくて。







「じょ・・・冗談じゃないわ!!!!!!」







そう言って頭を抱え蹲ったは「ありえない!!」を連発するのだった・・・。






俺がそんなの言葉を理解するのはもう少し先の事。


















































「・・・?は何をあんなに大声で叫んでいたのだ??」







そう和麻の傍らで首をかしげるのは、神凪の元宗主で、の祖父に当たる人物。








「大好きなお祖父さままでもが参観に来てくれてはしゃいでるんだろ?」






「むっ・・・そ・・・そうか・・・・・・」







そんな和麻の言葉に、幸せそうに目尻を下げる重悟に、綾乃も煉も一斉に苦笑した。









「しかし・・・意外でした。まさか僕までお声がかかるとは・・・。」







てっきり父さまにお願いなさるのだとばかり思っていたのですが・・・










そう苦笑する煉に、綾乃は困ったような表情を浮かべて「そのはずだったんだけどね?」と苦笑した。








「和麻が、厳馬伯父様に、今日の私たちの仕事全部押し付けちゃって・・・。」






「当然、誰かが穴埋めしないと、信用問題に関わってくるだろう?神凪の。」






「でも!お父様連れてくるんなら伯父様だって・・・」






「ふっ・・・あのクソ親父も、精々悔しがればいい・・・。」









クツクツと笑う和麻に、煉にはその言葉の意味が読み取れて深い溜息をついた。







そう、単に、和麻の嫌がらせなのだ。父に対する一番の嫌がらせ。それはそうだ。重悟がの祖父に当
たるならば、厳馬とて彼らから見れば『父方の祖父』になるのだ。当然、重悟同様、厳馬も。厳しい口調と態度
ながらも、二人の孫を溺愛しているのが見て取れる。故に嫌がらせ・・・。









「全く・・・少しは落ちついたと思っていたのに・・・。」





「無駄よ。和麻の本質などんなに時間が流れようと早々変わるもんじゃないわ。」





「姉さま・・・。」








そうはっきりと言い切ってしまえる、和麻の妻で自分の義姉にあたる綾乃の言葉に、煉は再び溜息をついた。









「さて、何はともあれ、行くか。」







そんな和麻の言葉に、同意するかのように、皆が一斉に歩き出した。


























































『授業参観』とは何か?





そう問われたら『親バカ共の子供自慢の場』だとちゃんは言っていたけど・・・・・・











「・・・今なら、ちゃんのその気持ち、よくわかるわぁ・・・。」






「・・・・・・?」








そんな私の小さな呟きに、隣の席のちゃんは瞬時にそれに気づいて首を傾げてくる。








「ん・・・『授業参観が親バカたちの子供自慢の場』だって言った意味。」






「・・・・・・あぁ・・・。」






「その通りだなぁって・・・。」









そう苦笑すれば、私はあからさまに振り向いたりはしないけれど、後ろから届く暖かくて、けれど穴が開きそうな
ほど見つめられている感覚に意識を向ける。








そう。私たちを温かく見守ってくれているのは他でもない、パパとママ、それに重悟お祖父さまに煉お兄さま。私
たちの大切な『家族』で・・・。










「・・・ホントに家族総出で来ちゃうし。」





「・・・まぁ、厳馬お祖父さまいないだけマシじゃね?」







俺、あの人いると、絶対緊張して座ってるのも苦痛かも。








そう小声で苦笑するちゃんも、表情と声色は今朝とは比べて凄く、落ち着いていて・・・








やっぱり、本音では来てほしかったんだ、ちゃん。







「・・・けど、やっぱ、一族総出ってのは・・・やっぱ恥ずかしいって言うか・・・。」








ちょっと迷惑かもな。









そう呟いて、そっと瞳を伏せたちゃんは、いつもより緊張した声色で授業を進める柚葉先生の声に集中し始め
た。2時間目、この授業参観での授業は『国語』。そして、いつものような教科書どおりの授業ではなくて・・・。










「では・・・次は・・・川原夏美さん。紹介してもらえるかしら?」






「は・・・はい。」








そう言って私の大好きな親友のなっちゃんは、柚葉先生の言葉を受けて立ち上がり・・・。







くるりと背を向け歩き出すと・・・。








「えと・・・私の、大好きなお母さん、です。」








そう恥ずかしそうに言うと、手にした作文用紙に書き綴った言葉を紡ぎだしていく。









因みにその作文のテーマは『ありがとう』だったりするわけで。








「・・・だから、お母さん。いつも、私たちのために、朝早くからお弁当作ってくれてありがとう。」












そう言葉を締めくくったなっちゃんに、クラス中から拍手が起こる。










「川原さんはいつもお母様の手作りのお弁当なのね?」






「はい!すごくおいしいんですよ??」








そう笑うなっちゃんは本当に可愛くて・・・。なっちゃんから「ありがとう」と言われたなっちゃんのママさんも。頬を
染めながらも、なっちゃんの言葉に感動してちょっと目が潤んだりしていて・・・。








「これからもその気持ち忘れないでくださいね?では・・・次。八神・・・さん。」






「え・・・あ・・・はい?」






いきなり名前を呼ばれたものだから、慌てて立ち上がれば、背後からくすくすと笑う声が聞こえて・・・。







「八神さんのおうちは今日、どなたが来てるのかしら?」






わかっているはずなのにそう問いかけてくる柚葉先生に、私は一瞬唖然となったけれど・・・。








「・・・先生。どうせならちゃんと一緒に紹介してもいいですか?」







「・・・え?」






「双子なんだし、時間短縮できるでしょ?」







ね?ね???








そうにっこり言えば。柚葉先生は「・・・仕方ないわね。」と口に出しては言わなかったけれど、そういう表情を浮かべ
て・・・「八神くん。」と、ちゃんの名を呼んだ。









「はい。」








「二人で、紹介してくれる?」







「・・・はい。」









柚葉先生の問いかけに、ちゃんは溜息をつきつつも、私に視線を投げて・・・。








向う先はただ一つ。









「・・・父さん。母さま。」






「煉お兄さま。重悟お祖父さま。」






「「今日は来てくれてありがとう。」」








あからさまに空気の違う4人の前に立てば。そう言ってまずは頭を下げて・・・。









「紹介します。僕たちの家族です。」








そう宣言したちゃんに、クラスメイト達は唖然とした表情を浮かべていて、その父兄は。驚いていた。










「私たちの両親は、重悟お祖父さまの跡を継いで、『神凪』家という、歴史ある家柄を切り盛りしています。」







「普段は家で雑務をこなしてるんですが、その仕事量は、子供の僕らが見てもすごく多くて・・・。」






「ほんとは、こうして私たちのために使う時間なんてないはずなんです。でも・・・」







「無理してでもこうして僕たちを気にかけてくれる両親が・・・家族が。」







「「自慢なんです。」」









息ぴったりにそう言うと。すぐにママたちへと振り返って・・・。









「「ありがとう。」」









たった一言。なっちゃんみたいな飾り立てるような言葉もなくただ一言。そう言えば。気づけばママに抱きしめら
れていて・・・。









「・・・ママ?」





「・・・母さま??」






「・・・無理なんかじゃないわ。私が、私たちがしたいから、来たかったから此処に来たの。」






「綾乃。」









ママを呼ぶパパの声に、ママは私たちを離して、すっと、迷う事無く背筋を正し・・・。







「逆に皆様に紹介させていただきますわ。・・・自慢の、子供たちです。」






そうにこやかに宣言したママの表情は・・・どの家のママよりも・・・『母親』らしく思えた。


























































「で?あれからどうなったんだ??」







夜景を楽しみながら食事が出来る、ちょっとレベルの高いレストランで、一家揃って食事をしていた俺たちに、
ふと思い出したように問いかけてきた父さんに、俺もも、一瞬顔を見合わせて苦笑した。







父さんが言う「あれから」とは授業参観が終わった後の話だ。







「ん〜。それがね?今まで散々悪口言って来た子たちが手のひら返したように接してきて・・・。」






うんざりしたような表情を浮かべるに、俺もコクコクと頷いた。








そう。今までというか、父さん達が来るまで、俺たちを馬鹿にしていた五十嵐達が、気持ち悪い事に馴れ馴れ
しく接してきたから驚いたのだけれど。







「まぁ、当然だけど、そこは妥協せずに。」






しっかりと成敗させていただきました。








そう言えば。父さんはなぜか面白そうに笑っていて・・・。









「くっくっくっ・・・お前のあの容赦ない攻撃、見事だったなぁ・・・。」







「やっぱ見てたんじゃん。白々しい。」








ジト目で睨んでみても、生憎この父には効果がない。寧ろ・・・








のそういうところは綾乃似だな。綾乃もキレると容赦がない。」







「別にキレてないし。」







さらりとつっ込んでみても。聞き流されてしまうのはいつもの事。








「でも、パパとママって結構名が通ってたんだね??」







あんなに父兄の人たちの表情が変わるなんて・・・。









ぱくっと、料理を口に運ぶに今度は父さん達が苦笑した。








「ん〜、あたしたちって言うよりは・・・やっぱり『神凪』の名前じゃない?有名なのは。」






「でも、『神凪』が有名ってことは本業も有名ってことだよね?」







大丈夫なの?








そう首をかしげるに、父さんは穏やかに瞳を細めて・・・。








「あぁ。同業者にとっての『神凪』の名はやっぱ本業で通ってるが、一般にはやっぱ『歴史ある家柄』として
の認知度が高いだろうな。」







何せ戦国時代からだっけ?続いている家だし。







ワイングラスを片手にそう言った父さんは「ま、ブルジョワ学校の生徒が知ってるのは上辺だけだろうから心
配しなくていいだろう。」と言葉を繋げた。








「ま、いざとなりゃあ、霧香あたりをけしかけて・・・」






「・・・いい加減霧香おねえさまイジメるの止めなよ、パパ・・・。」







再びいつもの悪巧みした笑みを浮かべる父さんにが溜息をつくのだが、その正面でいかにも「寧ろ公僕な
んだからこき使って何ぼでしょ?」と言わんばかりの空気を纏う母さまは父さんの言葉に酷く同意している。








「けど・・・」






「ん?どうしたの?」







「・・・今日、来てくれて本当にありがとう。俺・・・朝、酷いこと言ったのに・・・。」








しゅんと、珍しく顔を伏せれば。不意に伸びてきたのは大きな手のひら。






あたたかくて、やさしい・・・・・・







「父さん・・・。」






「アレくらいの言葉、酷いうちには入んねぇ。それに、綾乃も言ったが・・・俺たちが行きたかったから行った
だけだし、お前はもう少しわがままでもいいくらいだと思うぞ?」







「そうよ、。あんたはみたいに我が侭言ってもいいんだから。」






「じゃあ、このデザート貰っていい??」






「アンタはもう少し遠慮なさい、。」











折角のいい、親子の風景を台無しに出来る我が姉はやっぱりなんと言うか・・・









「・・・むぅ・・・ママのケチッ!!」






「なんと言われようとも、これだけは譲れないわ!!」









計算高いのやら素でやってるんだか・・・。









「つーか、に乗せられてどうするよ、綾乃・・・。」







「やっぱ、一番の母さま似ってなんじゃねぇの??」







「はぁ・・・俺はまだの教育を失敗したとは思いたくねぇんだがなぁ・・・」











と、脱線していく話もやっぱりいつもの事で。








まぁ、何はともあれ・・・










「・・・ありがとう。」







































FIN